貿易の仕組み 〜関税?WTO?FTA?EPA?GATTとは?わかりやすく解説!〜
現代の社会では「貿易」はなくてはならないもので、世界広しと言えども貿易無しで存続できる国は無いでしょう。
ですので、ニュースでもよく「関税」「WTO」「FTA」などの貿易に関する用語が飛び交っています。
今話題の「TPP」も貿易に関する条約ですね!
ということで今回は、そんな貿易に関する基礎を解説致します!
それでは早速、レッツビギン!
目次
貿易の仕組み
関税とは?
貿易を語る上で欠かせない制度が「関税」です。
みなさまも海外旅行からの帰りの飛行機で「タバコは200本以内ですか?」や「買い物金額は20万円を超えてますか?」などのチェックを、配られた紙に記入すると思います。
あれが「関税のチェック」になるんですね。
関税の目的
関税とは、自分の国の産業を守る為の税金です。
例えば日本なら、米には1kgあたり341円の関税がかかります。
これは「外国産の安い米が輸入できちゃうと、日本の米が売れなくなり、日本の米産業が壊滅してしまう」のを防ぐためにあります。
関税の例
例えば、皆さんが5キロ3000円のタイ米を買うと、5kg×341円=1,705円は関税として政府に収めているような形になります。なので、j実際の米の値段は、3000円ー1,705円(関税)=1,295円と言えますね。
国産の米が5kgで大体2000円くらいなので、関税によって、タイ米が国産米より高くなっています。なので、日本人がタイ米よりも安い日本米を買います。
もし関税がないと、タイ米は国産米よりも安くなり、国産米は売れなくなります。
そうなると、米農家はの人たちは生活ができません。日本の農業生産額も落ち込み、経済の縮小にも繋がっちゃいます。
よって、関税をかけることで「日本の生産者」や「日本の経済」を守っているのですね!
関税って誰が払うの?
関税は、基本的には「外国から商品を買った人」が、日本政府に払います。
例えばタイ米なら、「タイから米を輸入した企業」が政府に払います。
しかし、輸入した企業が次に売る時は、政府に払った関税分も価格に上乗せしているので、結局は消費者が関税を政府に支払っているのと同じことになります。
日本の関税
上記のような「国内産業を守るため」に関税制度があるため、
- 日本国内で生産できるものは「高関税」
- 日本国内で生産できないものは「低関税」
という形になります。
例えば飲み物を見てみると、
- 日本でたくさん作っている緑茶は高関税(20%・WTO税率)
- 日本で殆ど取れないコーヒー豆(生豆)は低関税(0%)
お肉で見てみても、
- 日本でたくさん育てている牛の肉は高関税(38.5%・暫定税率)
- 日本であまり育てていないヤギや羊の肉は低関税(0%)
となっています!
で、この関税ですが、現在では世界に「たくさんの関税に関するルール」があります。
上記の緑茶の「WTO税率」も世界のルールのひとつです。
では、次はこの「世界のルール」を、ざっくりと歴史に沿ってみていきましょう!
貿易の歴史とルール
現在の貿易制度が完成するまでに、歴史上で3つの大きなポイントがありました。
それは、
- 「世界大恐慌」と「ブロック経済」
- 「GATT」と「自由貿易」
- 「WTO」と「二国間条約」
です。
では、順を追って見ていきましょう!
1:「世界大恐慌」と「ブロック経済」
きっかけは1929年のアメリカのバブル崩壊から始まった世界大恐慌でした。
世界大恐慌では「負の連鎖」が世界中に伝染した為、世界の国はその連鎖を断ち切る為に、経済において他国との間に「高関税」という壁を作りました。
関税を高くすることによって、他国との経済の交流を避け、自国の産業を保護します。これがいわゆる「ブロック経済」ですね!
ただ、さすがに1国だけの産業ではなんともならないので、アメリカは「南北アメリカで」、イギリスは「多数の植民地と」、フランスはオランダやスイスなどの「西ヨーロッパ諸国で」チームを組み、経済を回復していきました。
しかし、ヨーロッパやアジアで孤立していた、ドイツ、イタリア、日本は、協力してくれる国もいなけりゃ、十分な植民地も持っていませんでした。
そこで、これらの国が、ブロック経済の為各々植民地獲得を目指して周辺諸国を攻めていった結果、1939年には第二次世界大戦が起こりました。
なので、第二次世界大戦は「高関税」が引き金となって起こったのです。
2:「GATT」と「自由貿易」
第二次世界大戦も終盤に差し掛かると、世界は「高関税」が引き金となって世界大戦が起こったことを反省します。
世界は「ブロック経済なんてもうやめよう!これからは関税も下げて、自由に貿易しようぜ!」という方向に向くようになります。
その流れで、1947年にできたものが、GATT(ガット)と呼ばれる条約です。
GATTは「General Agreement on Tariffs and Trade」の略で「関税に関する世界共通のルール」みたいなものです。
「GATTに参加している国で、一気に条約結んで貿易活性化しようぜ!」のような感じですね!
GATTの1947年の第一回会議では「23カ国が45,000品目の関税引き下げ」について話し合いました。
そこからGATTは世界に広まっていき、約40年後の1986年から始まるウルグアイ・ラウンドと呼ばれる会議では、「123カ国が305,000品目の関税引き下げ」まで内容が広がっていきました。
まさに世界は、GATTで関税引き下げに向かっていったのですね!
3:「WTO」と「二国間条約」
で、このGATTがなんやかんやで1995年にはWTOと名前が変わります。
WTO=World Trade Organization=世界貿易機構
で、このWTOは現在では164カ国が加盟している、紛れもない大組織へと成長したのですが、問題もありました。
それが「一気に多国間で条約を結ぶのは、微妙じゃない?」という点です!
やはり、国によっては得意不得意があるので、「守りたい分野」もあれば「外国に頼りたい分野」もあります。
そこで、1990年代頃から世界では特定の国と国とで関税を決める「二国間協定」のブームが起こります。
日本の二国間協定
日本は2016年の時点で、
- ASEAN諸国(ベトナム・ブルネイ・インドネシア・タイ・フィリピン・マレーシア・シンガポール・ラオス・ミャンマー・カンボジア)
- スイス
- チリ
- メキシコ
- インド
- ペルー
- オーストラリア
- モンゴル
と2国間協定を結んでいます。
その他情報としては、
- 中国と韓国と日本は、3カ国での協定を結ぶ交渉を、2009年から交渉中。
- EUとは2013年から交渉中。
などがあります!
アメリカとの貿易条約
で、日本とアメリカはまだ個別の(WTOではない)貿易条約って結んでないんです。
日本は経済規模が世界3位、アメリカは1位なので、この2国が条約を結べば、世界経済でも非常に大きな流れにはなります。
そこで、両国が参加を表明しているTPPです。
TPPは10カ国ほどでの貿易条約ですが、世界経済3位の日本と1位のアメリカが興味を示している貿易条約なので、TPPには世界中の国が注目しているのです!
ということで、世界の貿易のルールは、
- 第二次世界大戦の反省から始まった。
- GATTからWTOと、世界的な貿易のルール整備が発達。
- 90年代からは、二国間でのルールが増えてきた。
という流れの元に、現代に至ってきました。
ただ、この「二国間での貿易のルール」も実は大きく分けて2種類あります!
それが「FTA」と「EPA」です!
ここでは「二国間でも貿易ルール」と言っていますが、ルールによっては3カ国で結ばれているものや、TPPのように10カ国以上の国での適用を目指しているルールもあります。
ただ、ここでは加盟162カ国に一気にルールが適用されるWTOと区別するために、「二国間での貿易ルール」と記載しています。
貿易ルールの種類
貿易のルールは、大きく分けてFTAとEPAの2種類があります。
簡単に言うと、FTAは「関税のルール」で、EPAは「関税に限ららない、経済全般のルール」です。
EPAの方がFTAよりも広域的なルール、と言えます。
イメージとしてはこんな感じ!
ということで、詳しく見ていきましょう!
FTA:自由貿易協定
FTAとはFree Trade Agreementといい、日本語で自由貿易協定をいいます。
簡単に言うと「俺らの国の間では、関税無くか減らすかして、貿易しまくろーぜ!」という条約です。
これは主に「得意分野が被らない2つの国」の間で結ばれます。
日本とオーストラリア
日本は車などの「機械工業」が中心の国ですが、オーストラリアは鉄鉱石などの「資源」が豊富な国です。
日本は車を作れますが、資源がありません。
一方のオーストラリアは資源は取れますが、車を作る技術は発達してません。
ということで、日本とオーストラリアがFTAに基づいて貿易をしまくることは、お互いの弱点をカバーし合い、非常に合理的ですね!
日本と韓国
日本と韓国は、ともに車や家電などの機械工業が得意な国です。お互い資源もさほど採れません。
なので、正直お互いにとってFTAを締結してまで貿易しまくるメリットは、さほど無いのですね。
なので、日韓FTAは締結されてません。
EPA:経済連携協定
EPAは、Economic Partnership Agreementといい、日本語で経済連携協定といいます。
FTAは「関税のルール」ですが、EPAは「経済協力のルール」です。なので、EPAは「関税はもちろんのこと、その他の分野でも協力していこうぜ!」というルールですね!
では、具体的にはどのような分野があるのでしょうか?
投資規制撤廃
国によっては、自国の産業を守るために、外国の企業や投資家の参入に制限していることが多々あります。それを撤廃していこう!というものですね!
例えばシンガポールは、外資系銀行には支店数やATMの数に制限がかけられています。ですが、アメリカと締結したEPAで、その制限を撤廃し、アメリカの銀行がシンガポールでの事業拡大できるようになりました!
人的交流の拡大
これは文字通りです。互いの国民を互いの国に行きやすくします。
例えば、2008年に結んだ日本とインドネシアのEPAにより、インドネシア人の看護師や介護士を目指す人を日本に受け入れる制度が始まりました。
知的財産制度の調和
著作権などの知的財産権に関してのルールは、国によって違います。
例えば、日本では違法になるコピー製品が、よその国では違法にはならないとしましょう。
そうなれば、せっかくEPAで関税ゼロで輸出しても、コピー製品が出回っちゃって本物の日本製の商品が売れなくなっちゃいます。
なので、ルールはお互いの国でできるだけ揃えましょう!というものですね!
競争政策の調和
基本的にどこの国も「独占禁止法」という、1つの会社が1つの市場を独占しない、というルールがあります。
で、このルールも国によって違ってたりするのです。
なので、この「競争」や「独占」に関するルールもできるだけ国同士で合わせよう、という形ですね。
などなど、ただ単に関税や貿易に直接関係があるルール(FTA)だけではなく、それらを取り巻く環境作り(ルール作り)から協力していこうぜ!というのがEPAですね!
日本が二国間で条約を結ぶ際は、FTAよりもEPAの方が圧倒的に多いです!
まとめ
それでは今回のまとめにいきましょう!
- 関税は、自国の産業を守る為にある。
- 世界恐慌から生まれた高関税(ブロック経済)が第二次世界対戦の引き金に。
- その反省から生まれたのがGATT。のちにGATTはWTOに改変。
- 90年代からは二国間のFTA、EPAが主流に。
- EPAは、FTAよりも幅広い貿易ルール。
です!
それではまた別記事でお会いしましょう!チャオ!