9条の憲法解釈問題とは? 〜集団的自衛権・安保法は憲法違反?わかりやすく解説!〜
2014年の7月1日、日本の政治は大きく動きました。
それは、「安倍内閣が、集団的自衛権を行使できる様に、憲法第9条の解釈を変更した」ためです。
ここから、「集団的自衛権」や「憲法解釈」「第9条」という言葉が非常にメディアを賑わす様になりました。
そして2015年の9月には集団的自衛権が行使できる法律ができました。いわゆる「安保法」ってやつですね。
この安保法、成立から1年たった2016年秋でも「安保法は廃止するべき!」といったデモが各地で起こっています。
そこで、今更聞けないこの「9条の憲法解釈問題」を今回は解説していきます!
それでは、レッツビギン!
基礎用語解説
それではまず、今回のテーマである「憲法解釈」「憲法9条」「集団的自衛権」のそれぞれの言葉を解説していきます!
憲法解釈
憲法解釈とは「政府が、憲法をどの様に捉えているか」ということです。
というのも、憲法って非常に曖昧なんですね。なので、読む人が違えば、捉え方も異なってきます。
で、その代表的な例として「第9条」が挙げられます。この9条が非常に曖昧なので、様々な議論を巻き起こすのです。
憲法9条
では、憲法9条はどの様に曖昧なのでしょうか?
まずは憲法9条を条文ママでみていきましょう!
憲法9条(そのままVer.)
第9条(戦争の放棄、戦力及び交戦権の否認)
- 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
- 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。
・・・んー!堅苦しいですね!
ということで、噛み砕いたバージョンをご覧ください!
憲法9条(噛み砕いたVer.)
第9条(戦争しない!てか戦力も戦う権利も持たない!)
- 日本は、世界平和のために戦争は仕掛けません。他の国とイザコザが起こっても、攻撃や脅しなどの力ずくの行動には絶対出ません!
- なので、他国を攻撃したり脅したりする為の軍隊は持たないし、戦争はしません。
という感じです。
まとめると、「他の国には攻撃も脅しもしない!戦争もしない!よって、軍隊も持たない!」ということです!たったこれだけ、憲法9条。
集団的自衛権と個別的自衛権
集団的自衛権とは、「仲間がやられたら、自分もやり返せる権利」です。
一方、「自分がやられた場合でしか、やり返せない権利」が個別的自衛権です。
例えば、アメリカがテロ組織に攻撃された場合。
集団的自衛権が使えると、日本はテロ組織を攻撃できますが、
集団的自衛権が使えない(個別自衛権のみ使える)と、日本がテロ組織に直接攻撃されていない為、日本はテロ組織に攻撃できません。
これはあくまで例です。実際は日本が集団的自衛権を使うには様々な制約がある為、単純に「アメリカが攻撃されたから、日本が仕返しをする」とは言えません。
詳しくは「安保法」の記事をご参照ください!
9条の憲法解釈の問題点
では、「9条の憲法解釈の問題点」とはどこにあるのでしょうか?
それを読み解くキーワードとなるのが、「憲法9条」に加え、「自衛権」と「国際協力」の3つの言葉です。
自衛権
自衛権とは、名前の通り「自国を守る権利」です。
で、この自衛権のやっかいなポイントが、日本国憲法には、自衛権に関する直接的な記載が一切ないのですね。
ただ、13条には「国民の生命や自由、幸福追求の権利は、国政の上で最大限尊重する」と書かれています。
ということは、他国が攻めてきて国民の命が危険になれば、国は国民を守らないといけません。
ここから、日本国憲法には自衛権に関する記載はありませんが、13条により実質的に自衛権は持っている、と考えられています。
国際協力
そして「国際協力」も大切なテーマです。
憲法の前文には「平和の維持や圧迫の排除を務める世界の中で、名誉ある地位を占めたい」や「自国のことのみに専念して、他国を無視してはならない」と書いてあります。
言い換えれば「世界平和の為に、他国と協力していきましょう!」ということですね!
3つのキーワードのバランスが重要
この様に、ただ単に「9条があるから、戦力を持つことはダメだ!」とは言い切れないのです。
もちろん9条は大切ですが、自国の防衛も大切だし、国際協力も大切です。
そこで、この「戦力不保持(9条)」「自国防衛(13条)」「国際協力(前文)」の3つの要素を、その時の政府がどの様なバランスで考えていくか、という点で憲法の解釈は変わるのです。
それでは、1946年の憲法制定から現在まで、どの様に解釈が推移していったのかを見ていきましょう!
政府の憲法9条解釈の推移
1946年:正当防衛も認めません。
憲法ができた1946年頃は、正当防衛すら認められてなかったんです。
「誰か攻めてきても、国連が守ってくれるさ!」という感じです。
まま、9条をスーパーウルトラ大事にしてたってことですね。
9条・13条・前文の比率で言うと、100:0:0くらいでしょうか。
1950年:さすがに自衛権は使えることにしましょう。
しかしそんなことも言ってられません。1950年には自衛権はさすがに認めました。
この時は、90:10:0くらいでしょうか。
1954年:自衛隊は憲法違反じゃありません。
1950年にできた、日本の治安を守る「警察予備隊」が1954年には、国を守る「自衛隊」になりました。自国防衛の意識が強くなってきましたね!
加えて、日米安保条約も結び、アメリカとの関係が強くなっていきます。
ただ、まだまだ自衛隊は小さい組織でしたので、比率は、80:10:10としましょう!
1960年:集団的自衛権、どうしましょうか。
今までは、「集団的自衛権なんて、もってのほかだ!」と思われていましたが、1960年に、時の総理、岸信介さん(安倍総理の祖父)が、「集団的自衛権って、結構大切じゃない?」というスタンスを見せました。
国際協力意識が少し高まりました。75:10:15としましょうか。
1972年:集団的自衛権、認めません!
ところがどっこい1972年には、政府ははっきりと集団的自衛権を認めないことを宣言しました。
しかしこの頃から、自衛隊も徐々に大きくなっていきます。集団的自衛権を認めないことで国際意識は下がり、、75:15:10でいきましょう。
1991年:世界平和の為、自衛隊を海外に派遣します!
このあたりから、国際協力に関する考え方がグイグイ伸びていきます!
きっかけは、湾岸戦争。
1991年の湾岸戦争で、日本は自衛隊を派遣せず、お金だけの支援をしました。
それが世界各国から大ブーイングを受けたのです。「日本は金だけで済ますのか!」と。
慌てた日本は、戦争終了後すぐにペルシャ湾に自衛隊を派遣し、なんとか世界のご機嫌を取り直しました。
翌1992年にはPKO協力法が定められ、自衛隊の海外活動が合法化されました。
PKOについてはこちらの記事をご参照ください!
ただし、憲法により戦争には参加できませんので、戦争中のところには行けません。そしてあくまでも立場は「中立」です。
ただ、今までは、日本国民を守るためとしての自衛隊が、他国との良い関係を築くための外交ツールの意味合いを持ち始めました。
自衛隊の規模も順調に大きくなると同時に、9条に対する自衛隊の定義が怪しくなっていきますね。55:25:20にしときましょう。
1999年:アメリカ軍のお手伝は、オッケーにします!
1999年には、北朝鮮や中国の脅威に備え「周辺事態法」を作り、日本近辺での自衛隊によるアメリカ軍への支援を許可しました。
もちろん攻撃参加はできませんが、この法律により、「中立的ではない立場での、攻撃の支援」ができるようになります。(攻撃そのものはできません。)
また、この頃には自衛隊の規模も、現在の水準くらいの大きさになります。
比率は、45:30:25にしましょう。
2001年:よりワールドワイドな支援を!
2001年には、9.11の発生に対し、「テロ特別措置法(テロ特措法)」を作りました。
これにより、支援対象がアメリカ軍ではなく「多国籍軍」に、活動場所も日本周辺だけではなく「世界中の非戦闘地域(戦場ではないところ)に拡大しました。
比率は40:30:30にしましょう。
2015年:認めます、集団的自衛権。
これが2015年の安保法です。
これまで認めていなかった「集団的自衛権」を認めるという、大きな方向転換です。
これにより、「戦力不保持」が大きくさがり、「国際協力」が上がります。
比率は、30:30:40くらいですかね。
時代とバランスの関係性
この様に、「戦力不保持(9条)」「自国防衛(13条)」「国際協力(前文)」の3つのバランスは、時代によって変わってきます。
1946年から見ると、戦力不保持は大きく下がり、国際協力は大きく上がりました。
これが良い悪いというよりは、これが時代の流れとでもいいましょうか。
ただ、このバランスの取り方は、政党によっても違います。
上の数値は全て自民党政権時の数値ですが、野党(民進党や共産党など)は、国際協力よりも戦力不保持を重視する傾向があります。
まとめ
では、今回の内容をまとめましょう!
- 憲法は曖昧なので、人によって受け止め方が違う。それが「憲法解釈」。
- 第9条とは、「他の国には攻撃も脅しもしない!戦争もしない!よって、軍隊も持たない!」こと。
- 第9条の解釈は、「戦力不保持(9条)」「自国防衛(13条)」「国際協力(前文)」のバランスによって決まる。
- 第9条の解釈は、時代によって変わってきているし、政党によっても違う。
以上、今回はここまでにしましょう!
それではまた別記事でお会いしましょう!チャオ!