衆議院選挙の仕組みとは? 〜小選挙区?比例代表?復活当選?ドント方式?ややこしい選挙制度をわかりやすく解説!〜
日本で一番大きい選挙と言えば、衆議院総選挙です。
この選挙が近くなると、街には選挙カーが走り回り、テレビのニュースも選挙一色になります。
でも、選挙の制度ってちょっと複雑で、分かりにくいんですね。
ニュースを見ても「小選挙区」や「比例代表」「復活当選」などの専門用語が当たり前のように使われていて、理解するのも一苦労です。
ということで、今回はそんな「衆議院総選挙」を徹底解説します!
それでは早速、レッツビギン!
「総選挙」と「通常選挙」
総選挙とは「衆議院の選挙」で、普通選挙とは「参議院の選挙」を指します。
理由は、衆議院の場合は一回の選挙で全員入れ替わるので「総選挙」といい、参議院の場合は絶対に、3年に1回のスパンでするので通常選挙と言います。
詳しくは、こちらの記事で解説しております!
目次
総選挙の概要
総選挙っていつするの?
総選挙を行うタイミングは2つあります。
衆議院が解散したとき
衆議院は解散があります。総理大臣が「衆議院を解散します!」と言えば、新たに総選挙をして、再度国会議員のメンバーを選挙にて選び直します。
通常、総選挙をするきっかけはこの「解散」になります。
任期が満了したとき
衆議院の任期は4年なので、前回の選挙から4年経過すると、総選挙をします。
しかし、ほとんどの場合、任期が満了になる前に解散するので、任期満了からの総選挙はほとんど無いです。
これまでに47回の総選挙がありましたが、そのうち任期満了によるのは5回のみで、直近は1976年の選挙です。
よって、現代で衆議院が任期満了になることは、ほとんどありません。
選挙権と被選挙権
選挙権は18歳から、被選挙権(立候補できる年齢)は25歳からです。
参議院の被選挙権は30歳からなので、衆議院の方が「若くても立候補できる」という特徴があります。
選挙のシステム
さて、ここからがいよいよ本題!ちょっとややこしいシステムのお話し!
衆議院の選挙のシステムには、「小選挙区制」と「比例代表制」があり、定員475名のうち、小選挙区制で295人、比例代表制で180人選ばれます。
小選挙区制
小選挙区制とは、「全国を295個のエリアに分け、各エリアで立候補した候補者の中で1位だった人が当選する」というシステムです。
簡単に言うと、「一番票をとった人が当選」という最もシンプルなやり方ですね。
投票する側も投票用紙には「候補者の名前」を書けばいいだけです。
参議院普通選挙では、「小選挙区制」ではなく「選挙区制」です。
参院選の詳細はこちらの記事からどうぞ!
大きい政党が有利
小選挙区制では、基本的に各政党から1人ずつ候補者が出ます。
例えば、2014年の第47回衆議院選挙の東京1区(千代田区・港区・新宿区)を見てみると、
という感じでした。同じ政党から2人立候補しても、当選は1人のみなので、意味がないんですね。
そして、一人しか当選しないということが、大きい政党が有利になります。小さい政党は、その分投票してくれるフォロワーも難しいので、小選挙区で勝つことは非常に困難です。
政党別の結果を見ても、
- 自民党:223議席
- 民主党:38議席
- 維新の党:11議席
と、小選挙区は、大きい政党の方が圧倒的に有利なシステムです。
野党共闘
そのため、「野党共闘」という作戦もしばしば取られます。
これは「野党で協力して、与党に勝つ!」という作戦です。
例えば、もう一度この表を見てください。
もし仮に、この時に野党(政権を握っていない政党、なので民主党と共産党)が協力して、候補者を一本化していたらどうなりますか?
単純計算で、民主党89,232票+共産党32,830票で計122,062票になります。自民党に勝てるのです。
ただ、同じ野党でも政党が違えば、目指す政策も違います。なので、野党共闘は簡単にできることではありません。
しかし、「与党を潰すためなら、なりふり構ってられるかっ!」というときはこの野党共闘を切り札にするときがあります。
比例代表制
小選挙区制は結構単純なシステムなのですが、ややこしいのは比例代表制。
比例代表制は、「政党の大きさに比例して、議席が配分されるシステム」になります。
ポイントは、「候補者ではなく、政党を選ぶ」という点です。
ということで、早速流れを見ていきましょう!
1:全国11ブロック別に、政党ごとの投票数を調べる。
まずは、全国を11ブロックに分け、ブロックごとの政党の得票数を調べます。
ここが一つ目のポイント、衆議院の比例代表制は、候補者ではなく「政党」に投票をします。
なので、投票用紙にも「政党の名前」を書きます。
ブロックの分け方は、下図の通りです!
ブロックごとに、政党に議席を振り分ける
次に、ブロックごとの政党の得票数に応じて、「ドント方式」で議席を振り分けていきます。
ドント方式とは、「各政党の得票を÷1、÷2、÷3・・としていき、得票数の多い順に議席を配分する」システムです。
例えばこんな感じ!
この「ドント方式」だと、政党の大きさによって獲得議席が満遍なく配分されるので、小選挙区の「大きい政党が圧倒的に有利」という欠点がありません。
政党が事前に用意した名簿順に、当選者を発表する
ドント方式によって議席数を割り出したら、政党毎に11ブロック合計で何議席獲得したかを集計します。
そして、事前に政党が用意した名簿順に当選者を発表していきます。
この名簿には1位や2位といったランクがつけられているので、政党が獲得した議席の数だけ、名簿のランクが高い順に当選していきます。
以上の流れが、衆議院総選挙の比例代表制の流れです。
参議院選挙にも「比例代表制」がありますが、衆院選とはちょっと異なります!
参院選の詳細は、こちらからどうぞ!
復活当選
あと、衆議院総選挙の比例代表制で大事なポイントがあります!それが「復活当選」です。
復活当選とは、「小選挙区で落ちた候補者が、比例代表制で当選する」ことです。
比例代表制の名簿では、小選挙区で立候補した候補者も載せれますので、この復活当選が出てくるのです。
ただ、小選挙区で落ちたということは、一度国民から「この候補者は必要無い」と判断された、ということです。
それなのに比例代表で復活当選というのは、果たしていいのかという部分は、長年大きな論点となっています。
小選挙区制と比例代表制のメリット
では、なぜ同じ選挙なのにシステムが2つもあるのでしょうか?
実は、この2つの制度にはお互いににメリットとデメリットが存在し、お互いが一方のデメリットをカバーしているのです。
メリットとデメリットはこんな感じ!
では、一個づつ見ていきましょう!
小選挙区制のメリットとデメリット
メリット
小選挙区制では、投票者が、直接的に候補者に投票するので、より国民の意見が反映しやすいことがメリットです。
また、大きな政党が強い(勝つべき政党が勝つ)ので、政局が安定しやすい、というメリットがあります。
デメリット
小選挙区制一番のデメリットは、「死票」が多いことです。
死票とは、当選者以外に入れられた票です。
例えば、再度2014年の東京1区を見てみましょう!
この選挙区での有効投票の数(全候補者への投票数)は、250,830票です。
その内、当選者に入れられた票は107,015票なので、全投票の約43%です。
言い換えれば、約57%の投票者は「山田さん以外」を望んでいるわけで、結果だけをみれば、半数以上の人たちの意見は反映されていないことになります。
このことから、小選挙区はしばしば「死票が多く、実は民意がしっかり反映されていないのではないか」という点でアツい議論が交わされます。
また、上でもお話ししたように、小選挙区では1位の人しか当選されないので、中小規模の政党、特に小規模政党には圧倒的に不利です。
比例代表制のメリットとデメリット
メリット
比例代表制のメリットは、何と言っても「中小規模の政党も、ある程度議席を確保できる」という点です。
ドント方式により、政党の大きさ(人気)に比例して議席を確保できるので、小規模政党でも議席を獲得できるチャンスが、小選挙区制より圧倒的に高いです。
事実、小規模政党の議席はほとんど比例区で獲得されています。
また、ドント方式では死票も少なくて済むので、幅広い民意を取り入れている、と言えます。
デメリット
比例代表制のデメリットは、「国民が当選者を選べない」という点です。
例えば、「政党内では絶大な権力を持っているが、腹黒いので国民の評判は最悪」な候補者がいたとしましょう。
国民からの評判は最悪なので、小選挙区では絶対に受かりません。しかし、政党内では絶大な権力を持っているので、比例代表の名簿には上の方に載るため、当選することができます。
というように、「国民が望んでいない候補者」でも比例代表制だと当選できちゃうことになります。これがデメリットです。
まとめ
ということで、衆院選をまとめると
- 衆院選は「衆議院の解散」の際に行われる。
- 衆院選のシステムは「小選挙区制」と「比例代表制」。
- 小選挙区制は、候補者個人に投票するため、民意が反映されやすい。
- 比例代表制は、政党の人気に比例して議席が配分されるので、小政党でも議席を獲得しやすい。
- 小選挙区制と比例代表制は、お互いの欠点をカバーしあっている。
です!
それでは今回はここまで!また別記事でお会いしましょう!チャオ!