安保法って結局なに? 〜駆けつけ警護?集団的自衛権?存在危機事態?戦争法?わかりやすく解説します!〜
安保法と言えば、2015年に国会で取り上げられ、秋にはいわゆる「与党の強行採決」によって成立した、と言われる法律です。
この安保法、国会で議論されていた頃はもちろん、1年経った今でも反対派の人たちは「安保法、廃止!」と声高らかに批判しています。
ということで、今更聞けないこの安保法、改めてどのような法律なのか見ていきましょう!
今更聞けない「安保法のこと」
安保法とは?
まず「安保法」という言葉の意味から考えてみましょう。
「安保」とは「安全保障」の略で、「国や国民に、安全や平和をもたらすこと」です。
てことは、「安保法」で「国や国民に、安全や平和をもたらす法律」ということになります。
こう考えると安保法、すっっげー素敵な感じがしますね!
正式名称はマニアック!
法律というのは基本「略称」で呼ばれます。
この安保法も、
- 国際平和共同対処事態に際して我が国が実施する諸外国の軍隊等に対する協力支援活動等に関する法律
- 我が国及び国際社会の平和及び安全の確保に資するための自衛隊法等の一部を改正する法律
という2つの法律をまとめて「安保法」と呼びます。
いや、なげーよ!!!!!
ということで、これで覚えちゃいましょう。
- 国際平和支援法(世界平和に協力しまーす!法)
- 平和安全法整備法(国の安全を守る関係の法律を、修正します!法)
です。イージートゥーリメンバー!
で、この2つの法律の中身がこんな感じ!
「平和安全法整備法」は、図のように10本の法律の修正をまとめて「平和安全法整備法」と呼びます。
ひゃー!まだまだややこしそうですね!
細かな部分は後で見るとして、ここでは安保法の大枠を掴んじゃいましょう!
- 自衛隊が国際協力のために出来ることが増えた。
- 国がピンチの時は、こっちから攻撃できるようになった。
の以上2点が安保法の大枠です!
では、詳細を見ていきましょう!
6つの『OO事態』
上のの図で見ると、この安保法はすっげーややこしそうに見えちゃうので、シンプルに見ていきましょう!
安保法には4つのポイントがあります!
それがこちら!
んー!!でもまだちょっとわかり難い部分がありますね!」
上記の「OO事態」という部分が、安保法では重要になってきます。
まずはこの部分を見ていきましょう!
『OO事態』の概要
この「OO事態」というのは、「その時の日本の状況」を表します。
例えば「存在危機事態」は「日本の存在が危うい状況」です。大ピンチですね。
で、どの国も「この状況の時はこう対処しよう」という基準が設けられており、日本も2015年までは「3つの事態」がありましたが、今回の安保法で「6つの事態」に増設しました。
では、この「6つの事態」を見ていきましょう!
こんな感じ!それでは一個づつ見ていきましょうか!
前からあったもの
武力攻撃発生事態
これはシンプルに「日本が攻撃された時」ですね。
攻撃された場合は「防衛」の名の下にこちらから攻撃の仕返しもできます。
武力攻撃切迫事態
これは、「まもなく日本が攻撃される」ような状態です。
例えば、「どこかの国の戦闘機が、爆弾を積んで日本へ向かってきている」ような時です。
まだ攻撃されたわけじゃないので仕返しは出来ませんが、その攻撃を迎え撃つ準備はできる、ということですね。
武力攻撃予測事態
これは今の北朝鮮でも言えることですね。「日本が攻撃されるかも!」という場面です。
北朝鮮は、ミサイル発射実験を繰り返し、日本を挑発しています。
そんな時はまだ防衛出動(自衛隊を配備する)はできないですが、それに対しての他国軍のお手伝いのみ可能です。
今回新たに設けられたもの
存在危機事態(新)
これは今回新たに設置されたもので、その中の目玉とも言える部分です。
上の武力攻撃切迫事態の中、日本ではなくても日本の仲間(アメリカなど)が攻撃された場合、日本はその仕返しの攻撃ができます。
例えば「どこかの国の戦闘機が爆弾を積んで日本へ向かってきている。その最中、アメリカ空軍の飛行機を打ち落とした」ような場合です。
まだ、日本は直接攻撃されてないが、仲間が攻撃されたので日本も攻撃をし返す、という部分がまさに「集団的自衛権の行使」ですね!
重要影響事態(新)
これは元来の「周辺事態」にとって代わるものです。新しく設置されたものです。
前までは「日本の周辺で日本の平和に重要な影響を与える場合」でした。
具体的には「日本の周りの海や空まで敵国が侵入し、挑発行為を繰り返したとき、アメリカ軍など他国軍への支援ができる」というものでしたが、ここから「日本の周り」という文言が無くなったような感じです。
でも「日本の周辺以外で、日本の平和に重要な影響を与える場合」が果たしてあるのでしょうか?
このあたりが、非常に解釈が曖昧なので、その都度政府の解釈に委ねられることになります。
国際平和共同対処事態(新)
これも新しいものです。
これは、「日本が関係無くても、世界平和を乱す場合は、日本はそれを成敗するお手伝いができる」というものですね。
現在で言うと、世界に広がるテロなどに対してです。
しかしこれは、「少々放っておいても、直接日本には危害が加わらないもの」なので、これを発動するには国会の承認が都度必要です。
その他のものも国会の承認は必要ですが、この国際平和共同対処事態以外は「急な事案の際は事後承認でもよい」とされています。
まあそりゃそうですね。日本が攻撃されたのに、国会開いて承認を得る、なんてナンセンスですから。
他国軍支援とは?
ここで出てくる自衛隊の他国軍支援とは、いわゆる「後方支援」というものです。
「実際に戦闘が行われていない場所」で、「弾薬などの消耗品・日用品・食料品など」を提供することです。
なので「戦闘に参加する」はもちろん、「戦闘地域に行く」ことや「武器の提供」などは絶対に出来ません。
というのが「6つの事態」でした!
では、それを踏まえてもう一度「4つのポイント」を見てみましょう!
安保法の4つのポイント
では、この4つのポイントを一つひとつ見ていきましょう!
1:「存在危機事態」に「新三要件」を満たせば、集団的自衛権を行使できる。
これは、基本的には上でみた「集団的自衛権が行使される」場面ですね。
しかし、「日本がピンチ」で「仲間が攻撃された」からって、いつでも自衛隊が出撃できるわけではありません。
自衛隊の出撃には、「新三要件」という項目を全てクリアすることが条件があります。
新三要件とは?
新三要件とは、
- 日本が大ピンチ!(国の平和や国民の命が危ない!)の時。
- 武力行使以外に解決策がない時。
- 自衛隊の武力行使は、必要最小限に。
というものです。
なので、集団的自衛権が行使出切るようになったからといっても、なんでもかんでもできるわけではありません!
2:「重要影響事態」に他国軍を支援できる様になった。
これも上で見た様に、「日本周辺で日本に重大な影響を与える事件が起こった時、他国軍を支援できる」の「日本周辺で」が無くなった感じです。
なので、例え世界の裏側でも「日本に重大な影響を与える事件が起こった」とみなされば、他国軍の支援ができる様になりました。(地球の裏側でそんな事件が起きるとはおもいませんが。)
まあ、世界がグローバル化しているので、安全保障もグローバルに行こうぜ!って感じですね。テロなどもありますし。
3:「国際平和共同対処事態」に他国軍を支援できる様になった。
今まで日本は、「日本が直接危険にさらされない限り」、自衛隊は出動できませんでしたが、これからは、日本に直接関係がなくても、世界の平和が乱れる場合も、自衛隊が出動して、他国軍のお手伝いをしよう!となりました。
例外として国連PKO活動や「テロ特措法」では、自衛隊が出動が認められてます。
まあ、「もっと世界に貢献しようぜー!」ってとこですね!
4:通常時でも自衛隊のできることが増え、他国軍の支援の幅も広がった。
「OO事態」などの日本が危険にさらされている場合以外の時も、自衛隊の任務の幅が広がりました。
例えば、
- 海外で、テロ組織に拘束された日本人を助けに行けるようになった。
- 日本のために活動する他国軍の武器(軍艦など)を守れるようになった。
などです。
その中でも「駆けつけ警護」もひとつの大きな論点となりました。
駆けつけ警護
駆けつけ警護とは、「国連PKOで派遣されている自衛隊員が、その国の市民や国連職員や他国軍の人がアブない奴らに狙われた時に、武器を持って助けに行ける」ということです。
今まで自衛隊は人を殺したことがありません。しかし、この駆けつけ警護の任務であれば、自衛隊員が人を殺すかもしれないし、殺されるかもしれません。
なので、この駆けつけ警護の論争も大きかったのです。
しかし2016年12月15日にPKOで南スーダンに到着した自衛隊員から、駆けつけ警護の任務が付与されました。
また、他国軍の支援の幅も広がりました。
大きくは、これまではアメリカ軍にしか支援できなかったことや、アメリカ軍しか使えなかった日本の港や飛行場を、その他の国の軍隊も使えるようになった、などがあります。
安保法の問題点
では最後に、この安保法で議論されている点をさらっと見てみましょう!
てゆうかそもそも集団的自衛権は憲法違反!
まず、大きな論点は「違憲かどうか」です。
今回の安保の中核を担う要素は「集団的自衛権」です。
この集団的自衛権、今まで日本政府は約70年間「違憲」と考えてきましたが、2014年に安部総理が「合憲」と、これまでの政府解釈を変えました。
なので、「そんなん70年も続いてきた解釈変えるのなんて、ありえんやろー!」というものですね。
まあ、こればっかりは人それぞれです。考え方が人それぞれですから。
「戦争反対」か「国際協力」か「国民の自由」のバランスをどう取るかによって、この答えも変わってくるので。
成立の仕方がアンビリーバボー!
この安保法、2015年に成立したのはいいのですが、「成立の仕方」がよくなかったのです。
普通、法律は「与党が賛成し、野党が反対する。しかし与党が若干野党に歩み寄ることで、野党もオッケーを出す」というなんとも茶番な大人な流れの元で作られるのですが、
この安保法は「野党の猛反対を押し切って、与党が多数決で押し切った」形で成立しました。(強行採決なんて言います。)
で、反対派は「こんな複雑で、多岐にわたる法案(合計11案)を、たかがた数ヶ月で議論するなんて正気ですか?」と批判すると、
賛成派は「いや、議論しよっていっても野党側が『反対!反対!』ばっか言って議論もなにもできやんかっただけやん!」のように、水掛け論アツい議論が繰り広げられていました。
戦争に巻き込まれる!
例えば、テロ組織討伐作戦に自衛隊が協力すると、日本はその仕返しをくらう確率も高くなります。
ただ、自衛隊が国際的な仕事をすることで「日本の国際貢献度」が上がり、それは外交上での「交渉カード」にもなりえます。
なので、「リスク」をかけてまで「国際貢献度」をあげる必要があるのか、という点も大きな論点ですね。
線引きが曖昧すぎる!
今回「OO事態では、自衛隊はOOできる」と説明しましたが、正直「OO事態」の定義が曖昧なんですよね。「日本の平和が明らかに崩れそうな場合」ってなんだよ!みたいなことです。
なんで、このあたりの曖昧な部分は、その時の政府が随時判断していくこととなります。
「それじゃあその時の政府が暴走しちゃったらどうなるねん!」という反対意見も多くあります。
なので、暴走しない政権を、みんなできちんと選挙で選んじゃいましょう!
まとめ
それではこの安保法のまとめにいっちゃいましょう!
- 安保法の目的は「自衛隊の国際協力を推し進めること」と「集団的自衛権を行使する」こと。
- 集団的自衛権を行使するには「新三要件」が絶対条件。
- 「駆けつけ警護」によって、自衛隊のリスクも上がる。
- 「意見問題」「強行採決」「リスクと国際貢献」「線引き」など、様々な点で安保法廃止活動がなおも続いている。
以上になります!
それではまた別記事でお会いしましょう!チャオ!